シナリオ No.05

ヴァンパイア博覧会 〜ヴァンぱく〜

作者 みゃー
ゲームシステム名 ヴィクトリアン・エイジ・ヴァンパイア
シナリオ傾向 異文化交流
プレイ難易度

はじめに

このシナリオソースは、ヴィクトリアン・エイジ:ヴァンパイア(ヴァンパイア:ザ・マスカレード用のサプリメント)を使用して遊ぶためのものです。 よって、プレイにはヴァンパイア:ザ・マスカレードのルールブック本体が必要です。

背景

 19世紀には国際博覧会(万国博覧会、万博)がヨーロッパ中で開催されました。 有名なものとしては1851年のロンドン万博(壁、天井の全てがガラス張りの温室「クリスタルパレス」は当時の人々に衝撃を与えました)、 1889年のパリ万博(パリの象徴であるエッフェル塔は、このときに建設されました)などがあり、 毎年のようにどこかで博覧会が開催されるといった万博ブームが巻き起こりました。

 これらの万博は、基本理念として、国民の教育向上(19世紀という時代は一般教育という概念が発達した時代でした)を掲げていました。 そして、当時の人々の関心が外国に非常に強く向けられていたことを端的に表しています。 無垢な民の上に闇の領主としてヴァンパイアが君臨できる時代が終わりつつあったこの時代、 世界情勢の変化に取り残されることを危惧する血族がいたであろうことは、想像に硬くありません。

舞台

 19世紀の産業革命によって一気に発展した大都市がふさわしいでしょう。 そのような都市では、領主時代からの既得権益をむさぼる長老と、資本主義時代の波に乗ってその頭角を現しつつある若輩との対立構造が発生しやすく、 この物語の舞台としてふさわしいものとなります。 ヴィクトリアン・エイジ:ヴァンパイアには、そんな都市がいくつも紹介されています。

導入

 物語の導入は、ある血族が万博の開催を公子に提案するところから始まります。 この血族は物語の中でもかなりの重要人物になると考えられるので、設定はよく考えた方がいいでしょう。 血族が時代に取り残されるのを危惧しているわけですから、かなりリベラルな考えの血族でありながら、 更に公子に意見できることから、それなりに地位を確保している血族がふさわしいでしょう。 たとえば、産業革命時代の波に乗って工業や貿易に投資し、一財をなしたヴェントルーの若輩などはどうでしょうか? 産業資本家というこの時代以降最も力を持つことになる立場を彼は誇りに思っているのですが、彼の実力は古い考えの血族にはなかなか認められません。 そこで、大々的なイベントを催して自分の才覚を示したいと考えるに至ったのです。

※このシナリオソースでは、万博が開催されることが前提になっています。 よって、反対多数で開催が行われないなどとなると、そもそも物語が始まらずに終わってしまうので、プレイヤーが邪魔しても無理矢理進めてしまうべきです。 提案者の血族は、必要とあらば《威厳》の訓えを躊躇無く使用して自分の意見を通そうとします。 また、周囲の古い考えの血族も、いい加減長い闇の生に退屈しているので、特に反対はしません。 加えて、万博が失敗してこの生意気な若輩の評判が落ちれば、それでいいと思っています。

万博の準備

 万博を準備するのはそれなりに大変でしょう。 キャンペーンの第一話をこの準備段階にあてるのもいいかもしれません。 さて、場所の選定や時期の決定などはもちろん重要なのですが、この辺りは別にV:tMで遊ぶ必要もないでしょう。 よって、ストーリーテラーが説明するだけで流してしまっても構わないと思います。 それより大事なのは、なんといっても展示内容です。 ヴァンパイアを対象とした万博なのですから、世界中のヴァンパイアに出展の打診がなされることになるでしょう。 そして、世界中のヴァンパイアが会場に集結することになります。

 この時代の世界の都市情勢(人間社会、血族社会の双方)については、ヴィクトリアン・エイジ:ヴァンパイアに詳しく書かれています。 このような一大イベントには、いくらでも陰謀を企む余地があります。 また、舞台となる都市の血族が出展するというのはとてもおもしろいと思います。 近代化社会の威光を古い血族に突きつけてやりたいと考える若輩たち、博覧会を自分のコレクションの展示会だと勘違いして喜び勇む長老たち。 PCは自分の父の展示を手伝うことになるかもしれませんし、また、PCを含む同胞たちに都市を代表して出展する役割が回ってくるかもしれません! (そして長老たちはそれをニヤニヤしながら見ているのです。彼らは他人を使った陰謀ゲームに慣れすぎているため、往々にして自分自身が動こうとはしないものなのです。)

万博開催

 いよいよ万博の開催です! 日が落ちるとともに展示品にかけてあったカバーが取り外され、世界中のヴァンパイアたちがもちよった様々な展示品が月光の元に晒されます(『日の目』を見るわけにはいきませんから!)。 それと同時に、近隣の都市から見物客としての血族がぞろぞろ集まってきます。 万博会場は、展示品はもとより、ヴァンパイアたちそのものの見本市の様相を呈するでしょう。

 そして、準備段階で仕組まれていた陰謀がいよいよ実行に移されます。 世界中、そして近隣の都市から有力な血族たちが集まってきているので、名前を売ったり、誰かの名を貶めたり、もっと直接的に暗殺などのテロ行為などがついに実行されることになるでしょう。 貴重な展示品が盗難にあって、その責任をPC達が追及されるというのもおもしろいでしょう。 以下に、陰謀の例を挙げてみました。

 ストーリーテラーは、PC達が事件に関われるように、積極的に(強引にでも)しむけるようにしましょう。 世界中から集まる奇妙なヴァンパイア達の饗宴ははたから見ているだけでも面白いものになるでしょうが、物語の主人公はPC達であるべきなのです。 発生した事件の解決をPC達にやらせるなど、積極的に巻き込んでいきましょう。

結末

 万博中に起こった事件が解決された場合、責任の追及など事後処理が行われ、物語は一つの結末を見ます。 万博開催中のPC達の行動が評価され、都市の血族社会の勢力図も大きく変わることでしょう。 さらに、世界中の血族との因縁は、次の世紀に繰り広げられる陰謀劇へと結びついていくでしょう。

 そして、Vanpire:the Masquerade へ…

(2005年05月11日/みゃー)
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