三十六計逃げるに如かず

名医と名政治家になるには、話のなかにどれほど多くの抜け道をつくれるかにかかってくる。
    ──ナベシマの名人学


 さて、ここでは、私の個人的な思想を書いていきます。これが常識とでも言うように書いていきますが、惑わされちやダメですよ?

 今回のテーマは初回にふさわしく「逃げる」。兵法でも「三十六計逃げるに如かず」といいますし。

 RPGプレーヤーというのはおかしな人種で、程度の差こそあれみんな猪武者です。雑魚相手ではまず逃げません。その上負けると、シナリオパランスが悪いと切って捨てる。困り者ですね。
 一方、マスターという人種は冷酷な輩が多いらしく、無理な突撃を命じられてあたら若い命を散らしたコボルト、ゴブリンは数知れません。

 普通、負けそうになってきたら逃げるものです。魅了されてたり、何か思想のために盲目状態になっていない限り、最後の一兵卒まで戦ったりはしないものです。そもそも雑魚モンスターとかは根性無い生き物ですし、駆け出しの冒険者だって端から見れば多少性格の良い破落戸にすぎません。逃げてもなんの不思議はないのです。
 武器とか世界観のリアリズムについては鼻たーかだかに論議する割に、こういう基本的なリアリティーについて語られることが少ないというのも問題ですねね。

 これは最近私がマスターしたソード・ワールドでのことです。PCは振り直し無しのボーナス経験点無し6人。主力の戦士のHPなんて5点でした。
 入り口にコボルトの見張りが3匹。戦闘に入ると同時に1匹逃走(中の仲間に知らせるため)。戦闘で負けが込んできたので、さらに1匹が中に逃走(1匹戦死)。洞窟の中で2度目の戦闘。コボルト8匹です。仲間の2匹がさくさくやられて、2匹睡眠。残り4匹は奥へ逃走。最終戦でボスの魔法使いとコボルト4匹。最初のターンでコボルトみんな寝かされたので、魔術師逃走。この魔術師は後でなんとでも使えて便利な奴になるわけですが、それは別の話。

 ここまでで出てきたコボルトはのべ15匹。そんなにたくさん従えているとなると、それなりに豪華なお宅になるでしようし、ボスのレベルも上げなきやいけない。バランスが取れなくなってきます。魔術師も含めてみんな死ぬまで戦ったとすれば、PCの方にも少なからず被害か出てきて、結構つらめのシナリオになっていたはずです。
 しかし、実際には9匹。それなら、いくらか貧乏所帯でも納得。ボスもへぼくて大丈夫です。宝が出なくても納得できるでしょう。経済的で良いじやないですか、おまけに適度に戦闘のスリルも味わえるし、全部オープンダイスだったのにPCには死者も出ませんでした。すぐ逃げるってのも雑魚らしくて良い感じだし、ボスが逃げおおせたらキャンペーンの導入にも使えるます。なんて良いことずくめなんでしょう。

 また、シナリオの関係上、逃げて欲しい戦闘なんてのを用意するマスターもいるかも知れません。そんな時でも、あらかじめ、雑魚を逃げさせておいて、プレイヤー達に逃げるという選択肢を印象づけておくことで、さあ逃げてという持、労せずして思惑通り逃げてくれることもあるでしょう。

 どうです、まさに「三十六計逃げるに如かず」ではありませんか?


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