罠 〜行く手を阻む物たち〜

卒業に必要な最後の1科目は、あなたの最終学期には開講されない。
    ──セイツ


 1.始めに

 私のような若輩者が罠という崇高なテーマについて語ってもいいのだろうか、という疑問はありますが、とりあえず今回のRPGよもやま話、「罠の仕掛け方」をテーマに少し語らせていただきます。ちなみにここで言う「罠」とは、洞窟や深い森といったいわゆる「ダンジョン」に設置された、PCたちが器用度や技能の力を使って解除することができる罠のことです。シナリオ上の罠についてはここでは触れません。でもそのうちきっと他の誰かが語ってくれることでしょう。
 

 2.目的

 さて、「どのように罠を仕掛ければいいか」について語る前に、まず「何のために罠を仕掛けるのか」について少し書いておきましょう。罠を仕掛ける目的、それはPCたちに罠解除判定に失敗させ、ダメージを与えることだけにあるのではありません。プレイヤーに緊張感を与えること。これもまた罠を仕掛ける目的の一つです。「緊張感」とは、まさに「冒険の楽しさ」そのものとも言えます。罠に限らず、TRPGにおける全ての障害は、「遊び」であるTRPGの「楽しさ」を増すためにあると私は思います。
 

 3.効果

 それでは以上のようなことを念頭に置いた上で、どのように罠を作成・配置していけばいいでしょうか。私は、いかに強力でも単発の(つまりは何の脈絡もなく、かつ何の伏線にもならない)罠を仕掛けるよりは、たとえPCにたいしたダメージを与えられなくても、いい意味でお約束な、そしていい意味で期待を裏切る、たとえ引っかかってもプレイヤーたちを楽しませるような罠(仕掛け)を作る方がいいと思います。
 もっとも、これはPCたちを危機に陥らせてはいけない、という事を言っているわけではありません。罠が緊張感をもたらすのは、それが効果的である場合です。そのためには愚かなPCを血祭りにあげることも必要です。プレイヤーにとって自分のPCが死ぬのは面白いことではないでしょうが、それゆえにプレイに緊張が漲ることうけあいです。
 

 4.仕掛け方

 では、罠がその威力を存分に発揮するために「実際にどのように罠を仕掛けるか」について、私が最もGMをする機会の多いゲームであるセブン=フォートレス アドバンストにおける罠の仕掛け方を例に、少し書いていこうと思います。ようやく本編に入るわけですね。もっとも知っている人には当たり前な、知らない人にもありきたりに感じるようなものですが。それでも次回から罠を作る際に少しでも参考になれば幸いです。
 まずは、ある罠を次の罠のブラフ(引っかけ)に使うというやり方です。一つ目の、見つけやすい罠を解除して安心したところに、ほとんど同じ位置にある本命の罠を炸裂させるというわけです。
 また、いかにも怪しげだけど罠はない、という状況を何度も作り、プレイヤーたちがいい加減警戒しなくなったところで罠を発動させる、というやり方もあります。
 時間的、位置的に離れた二つの罠を作り、一つ目を二つ目のための伏線にするという方法もあります。具体例を一つあげてみましょう。ダンジョン内に、ボタンを押せば開く扉を二つ配置します。一つ目の(ダンジョンの深度からいってはじめに押すであろう方の)ボタンは、押すと扉は開きますが、代わりにボタンのあった位置を中心に爆発を起こします。学習能力のあるプレイヤーであれば、同様の状況にある二つ目のボタンは、石を投げたり槍で突っついたりして前回の轍を踏まないようにするでしょう。しかし今回はボタンの直前ではなく、ボタンから少し離れた場所(つまり、石を投げたり槍で突っつくために立ちそうな場所)が爆発するように罠を仕掛ければ、それらのプレイヤーは再び罠に引っ掛かってくれる、というわけです。
 他にも、PCたちに罠を解除する暇を与えないようにするのも効果的です。例としては、3mくらいの落とし穴を掘ります。落とし穴は普通に解除できますが、その落とし穴の底には重要アイテムがあります。それを取りに行くには穴の底に降りねばならず、そこに足をつけたとたんにアラームなどの罠が作動する、というやり方です。穴を降りながら罠解除はできませんので(穴の上から体をロープでぶら下げて罠解除、というやり方もありますが)、ほとんど自動的にPCたちは罠に引っ掛かるというわけです。

 以上のように、罠の配置において重要なのは「二つ以上の罠の連携」です。ではそれぞれの罠の威力はどのくらいに設定するのがいいでしょうか。私は、運が悪ければ死ぬけれど、たいていは一発食らっても死なない、けど二発は耐えられない、くらいの威力がちょうどいいと思います。PCが一撃で死んでしまってはプレイヤーもGMも面白くないでしょう。かといってあまりに威力が弱いと緊張感がそがれてしまう。一連の罠(連携やその直後の戦闘)の結果、生かさず殺さずの状態に至るのがベストではないかと私は思います。もちろん、実際どの程度の威力に設定するかはそのGMの信条次第でしょうがね。
 

 5.最後に

 さて、それではここらでRPGよもやま話「罠の仕掛け方について」を終わりにしたいと思います。今回例に使ったセブン=フォートレス アドバンストに関しては、「ゲーマーズフィールド」という雑誌でより詳しくサポートしていますので、より詳しく罠について知りたい方は、こちらを参照してください。この文章がこれから罠師として生きていこうとしている人に、ほんの少しでも参考になってくれれば幸いです。


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