レポート No.5

ダンジョンズ&ドラゴンズ 4th edition.

製作 Wizards of the Coast
出版社 ホビージャパン
ジャンル ファンタジー・ダンジョン

はじめに

ダンジョンズアンドドラゴンズ(D&D)とは、世界初のテーブルトークロールプレイングゲームのシステム名である。1974年にTSR社から出版されたこのゲームは、1977年の新装改訂後、爆発的な人気を博した。それ以降D&Dはいくつもの版を重ねてきた。その中でもアドヴァンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ(AD&D)と呼ばれるゲームは、膨大なルールとデータ、利便性を兼ね備えた、まさにRPG界の巨頭と呼べる存在であった。現在D&Dと呼称されるゲームは、正確には初代AD&Dから数えて4版目であることを意味する。

どんなゲーム?

剣と魔法の世界において、様々な種族とクラス(職業のようなものだ)で構成されたキャラクター達をあやつり、多くの罠とモンスターに守られた迷宮――すなわちダンジョンを攻略していくゲームである。もちろんシティアドベンチャーのような遊び方も出来ないわけではない。しかし、このゲームのルールの多くは、戦いに戦いを重ねるヒロイックファンタジーを想定して作られている。モンスターをなぎ払いダンジョンを制覇することに全く興味が沸かないという方もいるかもしれない。しかし、D&Dの洗練された戦闘システムは、我々人間の持つ闘争本能を刺激し、いつしか戦いに我を忘れさせてくれるのだ。ロールプレイングゲームの原点に立ち戻り、D&Dの幻想的なバトルを出来るだけ多くの人が体験してくれることを私は願ってやまない。

ルールブックの構成

D&Dは、プレイヤーズハンドブック(PHB)、ダンジョンマスターズガイド(DMG)、モンスターマニュアル(MM)の3つのコアルールブックからなっている。2009年2月時点で、PHBとDMGの2冊は日本語版に翻訳されており、3月にはMMも翻訳出版される予定だ。

プレイヤーズハンドブックがあれば、プレイヤーはキャラクターを創造することが出来る。8の種族と8のクラスからそれぞれ一つずつを選び、特技、技能、装備、そしてパワーを選ぶことによってキャラクターは生み出されるのである。PHB一冊で、英雄級(1〜10レベル)のキャラクターから伝説級(11〜20レベル)、神話級(21〜30レベル)のキャラクターが創造できるのだ。PHB無しでD&Dをプレイすることは実質不可能である。よって、最も優先度の高いルールブックがPHBだ。

ダンジョンマスターズガイドには、ダンジョンマスター(一般的にはゲームマスターと呼称される)を行う上での心得などが書き記されている。特に重要なのは罠の作成ルールだろう。しかし、魔法のアイテム関連のルールなど重要なデータ類は殆どPHBに移行しているため、熟練のダンジョンマスターはこの書を必要としないかもしれない。

モンスターマニュアルには、プレイヤーキャラクター達の敵となりうるモンスターがひしめいている。1モンスター種別ごとに1ページというようなレイアウトになっているため、出したいモンスターのページをコピーしたときに便利なようになっている。この書が無ければ登場するモンスターのデータを全て自作するか、NPCしか登場しないシナリオを作る羽目になる。しかしなにより、D&D世界を彩る重要要素であるモンスター達が記載されているということ自体に意味があるだろう。PHBの次に優先度の高いルールブックである。

ルールの基本の基本

D&Dで判定に使用するダイスは基本的に20面体のみである。20面体を振って出た目と各種修正値を足しあわせ、結果が難易度以上であれば成功という非常にシンプルなルールである。一方で攻撃ダメージを決定する際には4面体、6面体、8面体、10面体、12面体のダイスを必要とする。4面体は8面体で代用できるが、4〜20面体のダイスが一緒になったダイスセットがあるので、それが一組あれば十分である。

魅力的な種族とクラス

前述したように、PHBには8の種族と8のクラスが記載されている。これを選ぶことがキャラクターの個性を決める土台となる。

8の種族とは、最も我々に近く融通無碍なヒューマン、森の奥で自然に生きるエルフ、妖精界の住人エラドリン、頑強な戦いの種族ドワーフ、小柄だがしたたかなハーフリング、ヒューマンとエルフの良いところを受け継いだハーフエルフ、魔界の住人の末裔ティーフリング、そして竜の姿をしたドラゴンボーンである。

8のクラスとは、守りと攻めの要ファイター、信仰の力によって仲間を守るパラディン、同じく信仰の力をもって仲間を癒すクレリック、味方の士気を鼓舞し戦場の趨勢を操るウォーロード、背後よりの必殺の一撃を得意とするローグ、執念深き狩人レンジャー、敵の生命を奪い去る妖術使いウォーロック、そして千変万化の魔法の呪文をあやつるウィザード、である。

クラスの選び方は、プレイグループ内で役割分担をすることが望ましい。が、敢えて全員がファイターというパーティーでも、十分遊べるのが新しいD&Dである。同様に、種族もそれぞれ多少の得手不得手はあるが、どのようなクラスと組み合わせても十分実用に耐えるように設計されている。ようするに、思うが侭にキャラクターを作ってよい、ということだ。

パワー

D&D4版の目玉はこの「パワー」と呼ばれるシステムである。パワーとは一種の必殺技のようなものであり、各クラスに特徴のあるパワーが備わっている。何回でも使い放題のパワーから、強力だが一回の戦いに一度しか使えないパワー、一日一回だが絶大な威力をもつパワーまで揃っている。D&D4版の戦いはパワーの撃ち合いである。パワーを知るものが戦いを制するのだ。そして、レベルが上がるとキャラクターは新たなパワーを覚え、その個性を深めていくのである。






以上が教科書的な説明。ていうか公式サイトに載ってそうな説明文だ(笑)ここからはもっとくだけた感じで私見を述べていこうと思う。

このゲーム、ルールブックが物理的に重いとか金銭的に重い(つってもスポーツや音楽を本格的にやること思ったらそんなに高い買い物じゃないと思うんだけど)という印象があるが、ルール・システム自体は極めて簡単なものである。サイコロ1個転がして修正値を足すだけなんだから当然なんだけど。

一つ前の3.5版時代は技能ポイントの割り振りというのがあって、これがひどく面倒なものだったのだが、4版では訓練されている技能とされてない技能の差があるだけで、技能の数も大幅縮小されていて、選ぶのも遊ぶのも簡単になっている。具体的に言うと訓練されている技能は判定値に+5される。25%のアドバンテージが得られるってわけだ。

特技の数は尋常じゃないのでちょっと悩むが……まあ、《追加hp》でもとっておけばいいんじゃないかな(笑)地味なものが多い上、特技の取り直しが正式にルール化されたので、割と適当に選んでもなんとかなる。

ウィザードやクレリックの呪文が大幅削減されて、攻撃用のパワーに変換されたので、呪文を選ぶ手間が省けるようになった。初心者はクレリックやめとけとかそんなこと言われずにすむってものだ。

攻撃用の呪文以外の呪文は、儀式というシステムに移行した。これは、非戦闘時に行使できる呪文システムである。たとえば、死んだ仲間を生き返らせるレイズ・デッドとか……恐ろしいのは、儀式習得者の特技をとるとファイターでもレイズ・デッドが使えてしまうというところだろうか(笑)一応デフォルトで儀式を使えるのはクレリックとウィザードだけなのだが、特技でとっちゃえばなんとでもなるところが4版らしい。

3.5版時代のD&Dでクレリックがいないパーティーなんてありえなかったのだが、hpの回復方法が変更されたので、前述の儀式の件と合わせて、別にクレリックがいないと無理なわけでもなくなった。これで無理矢理クレリックやらされなくて済むよ(笑)

で、そのhpの回復方法というのが、回復力というものを消費してhpを回復させるというもの。回復力は1日に数回使えるのだが、これを消費するとhpの4分の1が回復する。基本的には戦闘中には使えないのだが、休憩時には1日の上限まで何回でも回復できるので、とにかく敵を全滅させればポーションやクレリックに頼らなくても自力で回復できるのである。

戦闘に特化させた形でゲームを変えてきたのが4版である。ルールブックを隅々まで読み込んで無理難題を解き明かしていた3.5版の頃のヘビーユーザーには物足りないかもしれないが、間口が広くなったと考えればいいのだ。今までD&Dを「難しい」と敬遠していた人も是非手にとってみて欲しい。






ところで、このゲーム、敵モンスターにもレベルが設定されているのだが、実はあるレベルのモンスター1体の強さはおおよそ同じレベルのPC1体に相当する。最弱クラスのゴブリンやコボルドでさえこちらの1レベルファイターと同じくらいのhpをもっていたりするのだ。一応hpが常に1のミニオンという単位のクリーチャーも用意されているので、マスターをやる際にはその当たりでバランスをとることを忘れないように。

では、よきD&D4版ライフを君が送ることを願って、おしまい。

(2009年02月8日/Mya-4e)
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