レポート No.4

巨神戦記ギガントマキア

製作 霧岳朔夜/スタジオ因果横暴
出版社 ホビーベース
ジャンル ロボットもの

はじめに ―さぁ、始めようか―

 「巨神戦記ギガントマキア」はTRPGでは結構珍しいスーパーロボット物です。いわゆるマジンガーZや勇者王シリーズの系譜のやつです。

 科学文明が失われ、剣と魔法のファンタジー世界となった未来の日本列島を舞台とします。そこで世界を守る組織「アーク」の一員として失われた科学技術の遺産である巨大ロボ「神格機兵」を駆り、世界に混乱をもたらす謎の組織「パシオン」と"愛"と"友情"と"勇気"を武器に"希望"をそして時に"絶望"を抱いて熱き戦いを繰り広げる、それが「巨神戦記ギガントマキア」なのです。

 それでは強制熱血空間による、血反吐を吐きながら青く熱いセリフを応酬する、この熱きシステムの紹介を始めましょう。

世界観 ―忘れないでください。この美しい、世界の姿を―

アーク ―いつも、見守っていてくれたんですね―

 かつて科学技術により繁栄を極めた西暦文明が滅亡して幾世紀、科学技術は失われ魔法技術による文明が発達した世界"列島"それが物語の舞台の名前です。

 列島では我々と同じ姿をした種族"ヒューマン"、体の一部に動物の特徴を持つ種族"ライカンスロープ"、長き時を生きる種族"エルフ"が住んでおり、よくある中世ヨーロッパをモデルとしたファンタジー世界のような生活を送っています。

 列島では西暦時代の遺産が一部残っおり、中には現代のマンションや高層ビルといった建物が西暦時代の遺跡として発見され、そういった遺跡を利用した遺跡都市と呼ばれる場所もあります。

 西暦の遺産の中には大きすぎる力を持つものもあります。それゆえに西暦の遺産の存在を危惧し秘匿を行なう秘密組織が存在しているのです。

その名は“アーク”

 彼らは幻想結界と呼ばれる結界を列島全域に施し、彼らが危険だと判断したものを一般人が認識できないようにしているのです。

 このアークを統べているのは"電脳神マザー"と呼ばれる西暦時代に作られたAIです。彼女はこの世界に西暦と同じ滅びの道を歩ませないためにアークを使い世界に干渉しているのです。

 それはアークが秘匿しているのは西暦の遺産だけではありません。それは列島の外に存在する敵とそれから守るために列島を包む赤い霧"神の血壁"です。アークは世界を守るためにこの神の血壁を越えてやってくる敵と西暦の力を使って人知れず戦っているのです。

パシオン ―ヤツさえ倒せば、戦いは終わる―

 "パシオン"それは神の血壁の外側に存在し、列島に混乱をもたらそうとする敵対組織です。

 彼らは列島に住む人で心に負の感情を持つものを誘惑し、魔印を刻みます。魔印を刻まれたものは潜在能力を開花させ自らの望みを叶える力を得ることができます。しかし、その代償として彼らは思い出や感情を失い人ではなくなり"人魔"となってしまいます。人魔は吸血衝動と食人衝動に駆られ世界の敵となるのです。

 さらに人魔が絶望の淵に立たされた時、彼らは神の血壁の外から"鋼魔"と呼ばれる巨大な化け物を呼び同化することでさらなる厄災を招くのです。

 強大な力を得た人魔や鋼魔にはただの人ではもはや抗うことはできないのです。

クルースニク ―俺たちの戦いは、ここからが本番だ―

 ある日突然に覚醒し、幻想結界の影響受けず世界の真実を知ることとなる存在、それが"クルースニク"です。彼らは常人を超えた力を持ち、人魔と対抗する力を得ます。そのため、クルースニクは覚醒した者はアークによりスカウトされ西暦の遺産を使い人魔と戦うこととなるのです。

 クルースニクはアークでもマザー直属の部隊である特務隊に所属し、西暦時代の飛空挺"方舟"と巨大ロボット"神格機兵(ギガース)"を操り世界を守るために日々パシオンと戦っているのです。

 アークが保有する最強の兵器にして、唯一鋼魔に対抗できる存在が神格機兵なのです。神格機兵を操ることができるのはクルースニクの中でもさらに特別な神格機兵自身に選ばれし存在"フュージョナー"だけです。

 神格機兵は無機質でありながらも命を宿しており、人々の想いが集まった時にそれに応えその力を解放し"オーバーロード"します。オーバーロードした神格機兵は無敵であり、鋼魔を打ち倒しさらには闇へと落ちてしまった人魔の心をも救い出すことができるのです。

システム ―そう、僕たちはこれを守らなくちゃならないんだ―

 「巨神戦記ギガントマキア」のシステムを全て語ることはできないので幾つか特徴的なものを説明します。それはスーパーロボット物のお約束を踏襲した"各クラス"、このゲームの肝でもあるシーン制に継ぐ新しい進行方法の"ステージ制"、強制熱血空間を生み出す一番の楽しみどころ"エモーションカード"、そしてクライマックスを盛り上げる"オーバーロード"のルールです。

クラス ―僕は、ひとりじゃない!―

 ギガントマキアにはそれぞれ特徴的な以下の6つのクラスがあります。

フュージョナー
神格機兵によって選ばれた世界で唯一のクラス。彼だけが神格機兵を操ることができるのです。しかし神格機兵に選ばれるのは青少年が多く、神格機兵に乗らなければ大きな力を持ってはいません。
ミンストレル
神格機兵に人々の想いを届けることができる特殊な歌声を持っているクラス。その歌声は神格機兵の力を呼び覚ますと共に人に安らぎを与えることができます。特務隊の中ではオペレーターとなります。
ロード
特務隊のリーダーであり、皆を見守るクラス。アークから方舟の運用を任されている艦長でもあります。
メイガス
戦争用の大きな力を持つ大魔術の研究者であるクラス。彼らが使う大魔術は人魔や鋼魔への大きな武器になると共に仲間達のサポートもできるクラスです。
レンジャー
諜報員であり、兵士でもあるクラス。エーテリック・ボウと呼ばれる西暦の遺産である光を放つ弓を扱う。人魔戦の花形であり、鋼魔戦でのかませ犬だったりします。
サムライ(追加クラス)
刀を強化して人魔や鋼魔とも生身で白兵戦を行えるクラス。斑鳩と呼ばれる中世日本のような文化を持つ地域にのみいます。

ステージ制 ―会いたいな、いますぐ君に・・・・・・―

 このシステムではゲームの進行にステージ制という新しいルールを適用しています。ステージ制では以下のようにPCが登場できる場面がステージという区分であらかじめ提示されます。ステージごとに事前にシナリオキーという物語上重要な人物や物品も公開されています。

*赤血夜会集会場*
◆シナリオキー:“マーク”
赤血夜会の信徒達が集まる集会場のステージ。このステージにはシナリオキーとしてマークが存在する。マークと話をしたいPCはこのステージに登場すると良いだろう。
*血夜会事務室*
◆シナリオキー:“ビクト”
赤血夜会の事務室のステージ。ビクトが一人で作業している。ビクトと話をしたいPCはこのステージに登場すると良いだろう。
*路地裏*
◆シナリオキー:“ジミーの死”
人通りの少ない路地裏のステージ。悲鳴が聞こえて駆けつけることとなる。ジミーの死体を発見したいPCはこのステージに登場すると良いだろう。
*幽霊屋敷*
◆シナリオキー:“赤い血”
マークが昔住んでいた幽霊屋敷のステージ。ミンストレルとマークの思い出の場所。マークの素性が気になるPCはこのステージに登場すると良いだろう。

 PLはまずどのステージにでるかを決めた後に、GMはステージを左から順番に各ステージの演出を行なっていきます。PC達は他のステージにも登場したくなったら後に説明するエモーションカードを使うことでステージ間の移動もできます。

 全てのステージが終われば、幕間へと移ります。幕間ではPC達が全員集まり、情報収集や情報のすりあわせを行うことができます。幕間が終わるとまた新たなステージが提示され物語は進んでいきます。

基本はオープニング→前半→幕間→後半→クライマックスという流れとなります。

エモーションカード ―僕の想いは、きっとあそこまで届くはずさ―

 エモーションカードには愛情友情勇気希望、そして絶望の5種類があります。カードにはそれぞれにいろんなセリフと演出が書かれており、それを演出することでPCは達成値のブーストや必殺技の発動を行うことができます。

 これにより、竜巻が吹き荒れたり、黄金に光ったり、仲間の声で闘志を復活させたりと派手な演出やお約束的な演出を行うことができ、同時に熱血なセリフを言うことになります。
 そして戦闘に勝つためにはエモーションカードなしには無理です。これにより得意な人から苦手な人まで強制熱血空間に巻き込まれていく、そこがギガントマキアの楽しいとこのひとつでもあります。

 ちなみにこの記事内の小見出しに書かれたセリフはそのエモーションカードからの引用です。

オーバーロード ―見ろ!これが勇気の生み出す、奇跡の力だ!!―

 神格機兵は命を、心を持っていて、PC達のことを見ています。PC達が使った想いの力"エモーションカード"はそんな神格機兵の心に溜まっていきます。それが"チャクラゲージ"です。

 全てのチャクラゲージにエモーションカードが満たされた時、神格機兵はその新の力を解放"オーバーロード"することができます。オーバーロードにはフュージョナーのオーバーロードの申請、ロードの承認、そして最後にミンストレルが神格機兵に最後の思いを届かせることでやっと行われます。システム的には同時に処理するんですけどね。

 オーバーロードした神格機兵から溜まった想いの力が溢れ出す事で、チャクラゲージのエモーションカードを自由に使えるようになります。これにより、戦闘のクライマックスに大技の使用が容易となって、最後を華々しく飾ることができるでしょう。

最後に ―ブラボー!―

 ギガントマキアは不遇なシステムです。非常におもしろく、欠点も多いですがそれを補って余るほどの魅力的なシステムなのにも関わらず、すこぼる知名度が低いです。そのことが非常に残念です。

 ここではすこしでもギガントマキアの魅力を知って貰おうと頑張って書いたつもりです。少しでも面白そうと思っていただけたなら、ゲームショップ行けば結構叩き売りされているので、一度プレイしてみやってください。

自分にとっての魅力がみなさんにとっても魅力だったらうれしいです。

(2007年08月1日/酢酸)
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