レポート No.6

三國志演技

製作 たのあきら&F.E.A.R.
出版社 株式会社光栄(現コーエー)
ジャンル 歴史物

<概要>

舞台は1800年前の中国大陸。後に三国時代と呼ばれるは、中国の人口の九割が死に、離散した暗黒時代。だがその暗き時代だからこそ、英雄たちは輝く。現代にまで届くほどの綺羅星となって――!

というわけで三國志演技は、中国の三国時代を舞台に架空の英雄(候補)となって、剣を交えて戦ったり、口八丁で言いくるめたり、軍勢を指揮したり、華々しく散ったりするTRPGです。

<世界観とキャラクター>

えー、三国演義か横山三国志、もしくは三國無双シリーズ、コーエーの三國志シリーズのどれかの世界観を想像してください。……はい、大体今あなたが想像したとおりの世界観です。

要するに、史実の三国志ではなく『物語の三国志』が舞台なのですね。優秀な軍師一人の策が物凄い効果をあげますし、豪傑が一人いれば軍勢を吹っ飛ばせます。優秀なスパイや妖艶な美女は、敵の司令官をあっさり暗殺してしまうかもしれません。

そんなすごい能力を持っている代わり、キャラクターごとの役割分担は結構決まっていて、得意分野と苦手分野もかなりはっきりしています。

キャラクターのアーキタイプは以下の5つ、

となっており、これを選ぶと大体どうやって活躍するかが決まります。

また、キャラクター作成時に振る『利益・不利益表』には、「持病」とか「西域の生まれ」とか「冤罪」など、何となく三国時代っぽい特徴が盛り込まれ、キャラクターのイメージ作りに大いに役立ってくれます。時折、思い描いていたキャラクターのイメージと全く違うものが出て唖然とすることもありますが、まあそれも一興と言えましょう。ほら、人間自分の生まれを自分で選ぶことなんて出来ないんだし。

結局のところ三國志演技は、「何となく三国志っぽい世界観」で、「何となく三国志っぽいキャラクター」を操るゲーム、と言うことができるでしょうか。そんなアバウトさが許せて、何となく三国志っぽい世界を楽しみたい人にはお勧めです。

<システムの特徴>

一言で言うと大味、これに尽きると思います。

判定は、能力値の十の位に技能を足し、それに六面体2個の出目を足すだけです。キャラクターのタイプごとに決まっている「超絶能力」は、宣言すれば自動的に発動します。

戦闘は、9×9の盤を使って行われます。まず一番真ん中のマス目にコマを置き、戦闘する2人、もしくは1人対多数が「白兵」の技能で判定し、その値が高かった方が相手側にコマを1マスか、武器によっては2マス押しやります。これを繰り返し、盤の端までいったら負傷、盤から落とされたら死亡という、単純で視覚的にもわかりやすい戦闘です。

合戦のルールも、使う能力値と技能が変わるだけで戦闘のルールとほぼ同じです。武人あたりが自分の「白兵」能力値で判定し、敵軍を1人で追い払うルールなんかもついています。

ルールの仕様上、また活躍の場所がキャラクターごとに分かれやすい設計であるため、単独行動が多くなるのがこのシステムの特徴といえます。いかに登場していないキャラクターでも楽しめるように物語を進めていくか、マスターの腕が一番問われるのはここかもしれません。

<まとめ>

『三國志演技』が発売されたのは1995年。この頃コーエーの三國志シリーズはすでに発売され、遊ばれていました(そもそもこのRPGの元ネタみたいなもんですからね。このRPGもコーエーが出版元だし)。しかし、真・三國無双の大ブームにはまだ数年早く、TRPG『三國志演技』は少し早すぎた名作として、歴史の波に埋もれざるを得なかったのです。

ですが2008年夏には北海道で『大三国志展』が行われ、2009年4月には映画『レッドクリフ』の第二部が公開され、三国志を元にしたさまざまなゲームも売り出されています。三国志が再び注目されている今だからこそ、『三國志演技』はもっと遊ばれてもいいのではないでしょうか。

とはいえ哀しいかな、すでに『三國志演技』は絶版ルールブック。Amazonで何とか手に入るか、というレベルです。埋もれさせるにはもったいないくらい、よく出来たルールだと思うんですけどねぇ。どうにかして手に入ったら、大切にしてあげてください。

というわけで、私はこれからも『三國志演技』をプッシュしていきたいと思います。

(2009年03月2日/旅望)
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